レジ袋有料化によるCO2削減効果

【レジ袋有料化3つの例外規定】
周知の通り来月、2020年7月1日より、小売店のレジ袋が有料化されますが、全てが有料化されるのでは無く3つの例外規定があります。

経産省のHPには下記の通り書いてありました。
https://www.meti.go.jp/policy/recycle/plasticbag/plasticbag_top.html


①プラスチックのフィルムの厚さが50マイクロメートル以上のもの
繰り返し使用が可能であることから、プラスチック製買物袋の過剰な使用抑制に寄与するため
②海洋生分解性プラスチックの配合率が100%のもの
微生物によって海洋で分解されるプラスチック製買物袋は、海洋プラスチックごみ問題対策に寄与するため
バイオマス素材の配合率が25%以上のもの
植物由来がCO2総量を変えない素材であり、地球温暖化対策に寄与するため

例外規定は、いきなり全てを有料化すると、色んな弊害が出て混乱が予想されることを考慮して、遊びを作ってくれたという事でしょうか?

 

【今回有料化しようとした目的】
では、そもそも何のために有料化するのか?
今回実施される制度のガイドラインには、
https://www.meti.go.jp/policy/recycle/plasticbag/document/guideline.pdf


『資源・廃棄物制約や海洋ごみ問題、地球温暖化といった、生活環境や国民経済を脅かす地球規模の課題が一層深刻さを増しており、これらに対応しながらプラスチック資源をより有効に活用する』


とありました。要はプラゴミと二酸化炭素排出量の減量が目的のようであります。

ご当地金沢は2009年より食品スーパーが有料化されていて、マイバッグが定着しています。日々、環境問題には少しだけ目をかけている私も、コンビニで買物の際は極力袋を貰わないようにしているので、今回の制度には大いに賛成の立場であります。
ただ、プラゴミ減量は理解出来ますが、二酸化炭素減量の効果については話が出た頃から疑問を感じていました。レジ袋を削減することによって、果たしてどれだけの二酸化炭素が減量出来るのか?


【プラスチックに使われる原油の割合】
まずはプラスチックを生産するのに必要な原油量がどれくらいか調べてみました。
(一社)プラスチック循環利用協会の資料によると、


国内で消費される原油が年間約2億kl。で、そこから生産されるナフサが1800万kl、単独輸入のナフサが2700万klで、その合計した量から生産されるプラスチックが約1000万t。

これは原油に換算すると3%に満たないとあります。さらに、レジ袋が国産・輸入合わせて38万tほどなので、レジ袋に使われる原油たった0.1%程度にしかならないのです。

原油の8割以上が燃料として燃やされて、大量の二酸化炭素を排出しているというのに、今回経産省はたった0.1%の焼却から発生する二酸化炭素の排出が問題だーと声をあげて、今回有料化に踏み切った訳です。
レジ袋を削減してCO2の削減?ちゃんちゃらおかしい話です。全て合わせても3%にしかならないプラゴミの更にごく一部を減らす事のどこにCO2削減効果があると言えるのでしょうか?


二酸化炭素の排出量】
前段では排出されるゴミの量を数値で論じましたが、もしかすると原油とプラではCO2排出量が格段に違う可能性もあったので、実際の二酸化炭素の排出量についても調べてみました。
環境省がまとめた統計によると、

我国では年間11億トンのCO2が排出されています。計算方法は難しい数式が羅列されていて、バリバリ文系の私には全く理解できませんでしたが、燃焼させると概ね自重の2~3倍の二酸化炭素が排出されるようです。仮に使用された全てのプラスチックを焼却処分しても約2千万トン、その内レジ袋に至っては80万トン弱。

単体でみれば大きく見えます。が、分母の11億トンからみればプラ全体で2%弱、レジ袋は0.001%に満たないのです。

環境省がこの数字を公表しているのに、経産省が例外規定として①と③が認めた理由が分かりません。まあ、弊社としてはどちらも販売している商品なので、正直なところありがたい話なのですが。でもあえて申し上げたい!

 

【例外規定は必要か?】

①の50μの件。現状のぺらぺらのレジ袋だって使おうと思えば何回か使えます。私も2回使ったものを部屋のゴミ袋として使ってます。逆に50μの袋がタダでもらえるなら、消費者はマイバッグを持参するどころか、よほど環境オタクでも無い限り、わざわざ一度使った袋を持ち歩く事はしないと思います。人の心は弱いですからね。結局、50μの使用量は増加して、プラゴミの減量にはつながらないと思います。


③のバイオプラは二酸化炭素の減少効果とありますが、身の回りにあるから高い減少効果が出る気がするだけで、レジ袋にどれだけ原油が使われているか知らない国民に対するまやかしとしか思えません。これでCO2削減だーという経産省は国民を馬鹿にしているじゃないかと勘ぐってしまいます。


まあ、有料化出来ない事業主向けに例外規定を設ける苦肉の策だったのかもしれませんが。でも、バイオプラは原料のとうもろこしやサトウキビに限度があり既に品不足の状況でしかも通常品よりも数倍高いので、事業主への負担が大きくなります。こんな効果の無い面倒くさいことするくらいなら、「原則有料化、中小零細個人の企業で事業の性質上有料化出来なくても罰則規定は設けない」で十分だったのでは無いでしょうか?今回のコロナ禍で大半の国民が、他国よりも格段に緩い強制力のルールを守れた事を証明出来てますから。この例外規定を悪用する人はあまりいないと思います。

 

【ストローと一緒。レジ袋もスケープゴート
容器包装に使われているプラは約450万トン。内訳の詳細のデータは見つかりませんでしたが、ペットボトルが60万トンほどあり、レジ袋より4割ほど多いものの使用量削減の対象にあがっていません。
どこかのネットの記事で読みましたが、
レジ袋の製造・販売をする業者は中小零細企業が大半で、多少反対意見があがっても政府は簡単につぶせる。ペットボトルに関しては大手飲料メーカーが多く、反対意見が強くて押し返す事が出来ず対象に上げられなかった
とありました。
ストローと一緒ですね。身近でよく使われてるけど、無理矢理使わせなくしても社会にあまり影響は与えないにも関わらず、イメージ効果が高く、しかも業者が中小零細なので反対されても押し返せる。世の中綺麗事だけではやってけない事ぐらいは重々承知しています。ただ、今回の制度は、プラゴミ削減は中途半端、CO2削減は実際に効果が薄いとなると、ガイドラインにあるのが表向きの目的で、その実態は消費者がプラを使わないようにマインドコントロールするためのスケープゴートになってしまっている感じがして、なんか解せません。

 

【まとめ】

プラゴミ削減を目的にするなら1000万トンのプラをどうするか?から論ずるべきです。ちなみに私はサーマルリサイクル推進派です。マテリアルリサイクルのために水を汚して洗浄し、さらに電力使って原料として整えるより、回収したものを集積してサーマルに利用した方が効率良いし、さらに前述の通りCO2発生量も極端に少ないからです。また、原油を使用する限りプラの原料ナフサは作らなければいけないので、プラスチック全廃は無理な話で上手く使っていくしかない。
CO2も削減するなら、発生の8割を占める化石燃料をどう減らしていくかを議論しないと、プラのような全体の2%に満たないところにいくら注力しても問題の解決にはなりません。
まあ、私がここでこんか事書かなくてもいわゆる専門家という人達は百も承知だと思いますが、あまりにも目的と実態がちぐはぐでしたので。