生分解性プラスチックについて

2019年8月28日(水)

 

『脱プラ問題』先般開催された、G20でもっと盛り上がってくるかと思われていたが、意外に少しトーンダウンしてきている気がする。それまで毎日のように、関連ニュースがあがってきていたが、最近見かけることが少なくなってきたような。

ちょっと大きな記事でいえば「キットカット」の外装が紙に代わるとの記事が出ていたが、あれも特別な紙にプラを貼合したもので、プラ使用量は減るものの、紙部分がリサイクル出来る訳ではないので、プラゴミの代わりに紙ゴミが増えるという事だそうだ。 

 

先般、仕入れ先さんの化成品メーカーさんに「生分解性プラスチック」についての簡単な勉強会をして頂いた。脱プラ問題が騒がれるようになってから、一般紙にも出てくるキーワードであるが、私達も現状がどうなのかよく分かっていなかったので、拡販というよりはまず理論武装からという意味合いで、レクチャーをお願いした。

 

メーカーさん曰く

そもそも、生分解性プラスチックの定義がいまいち曖昧であると。外気に触れていればバラバラにはなるが、最終的にはマイクロプラスチックにしかならないものや、100年から1,000年という超期間ではないものの分解に数年はかかるようなものも、現状では生分解性プラスチックと呼ばれているらしい。

 

では分解の定義とは?

「分子レベルまで崩壊する事」である。プラスチック、特に今回ターゲットにした、ポリエチレンの分解とは「高温と湿度により二酸化炭素と水になる」事を意味する。

 

グリーンプラ

完全分解されるプラスチックは、「グリーンプラ」という名称で、需要はとても少ないが、一応市場に出回っている。天然由来の木材やトウモロコシ等を原料として製造されているが、問題は山積である。

①生産量が圧倒的に少ないので、どうしても高コストになってしまう。

②分解することを想定しているので、強度は通常品よりも弱く、倉庫に保管しているだけで経時変化を起こし、包装材としての機能を無くしてしまう可能性もある。

③回収の仕組みが全く出来ていない。グリーンプラに詰めた生ゴミコンポストにそのまま入れると分解はするが、見た目、グリーンプラと通常品の区別が全く付かないので、混ざって入れてしまうと全く意味が無くなってしまう。

④完全分解をうたった粗悪品が海外から入ってきている。 

一応、日本バイオプラスチック協会というところが、「グリーンプラ識別表示制度」という仕組みを作っていて、グリーンプラにはマークを入れて識別する事になっているが、世間一般にあまり認知されておらず、ほとんど機能していないのが現状のようである。

http://www.jbpaweb.net/gp/gp_sikibetsu.htm

※日本バイオプラスチック協会HP

グリーンプラを使用しても多少通常プラスチックの使用量が減少するだけの事で、高コスト、結局は焼却処分になることを考慮すると現状では使用する意味が無いと思われている。

 

バイオマスプラスチック

環境問題に配慮し単純に、プラの使用量を減らそうと言う観点で、植物性由来の原料を10~20%混ぜた「バイオマスプラスチック」というものがある。プラスチックフィルムを3層で製造し、真ん中に植物性由来のプラを使用するといったもの。従来品より何割か高いが、なんとか一般的に売れる価格ではあるので、最近需要が拡大してきている。が、これもプラゴミ問題の解決にはならない。

 

新技術

今後有望なのが、原料をコンパウンド化することで、100%石油由来のプラスチックも生分解性に出来る技術である。メーカーさんも分解される仕組みはよく知らないらしく、ネットでも調べてみたが、素人ではよく分からなかった。原料プラントが小さいため、今はほとんど流通していないが、通常プラと同じマシーンで生産が可能なので、価格もほぼ同等になるのでは無いかとの事。今後有望な商品である。

 

最後に

冒頭にも述べたが、生分解性プラスチックの定義はまだまだ曖昧で、ネットで見ていても情報が一貫していない。完全分解する技術はある程度確立されていて、一部市場にも出回ってはいるが、環境のためというよりかはイメージアップのための自己満足の意味合いが強い。環境問題のうるさいEUで、プラスチックのリサイクル率は約30%との事。残りは埋立てや海洋投棄、そして問題になっていた中国や新興国への輸出で処理されていた。

これに対し我が国は下記にある通り約85%。ただ内訳をみるとマテリアルリサイクルが25%、18%が埋立て、サーマルリサイクルが57%とある。

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プラスチックを取り巻く国内の状況 2018年8月 環境省 より

世界的に、二酸化炭素排出の関係で燃料として利用するサーマルリサイクルはリサイクルとして認められていない。マテリアルリサイクルの内約8割が問題になっている海外への輸出であり、国内マテリアルリサイクル率を上げるためには、更にきめ細かい分別や洗浄をする必要で、そこにも燃料や労力がかかって来るわけである。であるなら、その行程を飛ばして燃料として利用する方が理にかなっているのでは無いか?
ペーパーレスも同様、プラ資源も無駄に使う必要は無いと思うが、使わない場合の影響を考慮せずに、世間一般がそうだからタダ単に使わなければ良いという風潮があるように感じる。まわりに同調する日本人の長所の弊害かな?
韓国とのいざこざもそうであるが、我が国は正しいことをやっていてもPRが下手くそなため損をしている気がする。奥ゆかしいところが日本人の良さではあるが、周りの動向にさゆうされず主張するところはきっちり主張して、我々が考える最良の方法を取捨選択していかなければならないとあらためて思った次第である。